第1章:事変

 ここではゲームスタート後の事を自分の見解・想像を追加してショート小説風にしています(‘∀`)

キュロス2世の暗殺と司祭の野望

 それは突然起こった。

 ギリシャとの和平交渉から戻った使者ザイラスによるキュロス2世暗殺事件に端を発する改革派のクーデターは、重臣達の働きにより内乱には至らず、キュロスの近縁であったダリウスを皇帝に立てることで終焉を迎えた。

 しかし、幼少で政治力を持たないダリウスは御輿として担がれたに過ぎず、早々に司祭ラハンがその実権を握ることになると、彼の秘めた野望が動き出した。

 「クーデターの首謀は(当時同盟関係であった)シオン王国にあり」と宣言したラハンは軍を派遣。
 濡れ衣を着せられたシオン王国はしかし、抵抗も虚しく滅亡に危機に追い込まれてしまう。

 辛うじて落ち延びた王女セリアと息子の王子エルグを乗せた船はギリシャを目指しエーゲ海を進むも、ペルシャ軍船の追撃を躱しきれず交戦状態に。

 これまでかと思われたその時、ペルシャ軍の前に立ち塞がったのは王女セリアだった。
 夫であるルースと心を通わせた後の彼女の瞳には、決意の炎が灯っていた。それはシオンとリナしか見ていない、あの竜人が命を賭したときの瞳の炎によく似ていた。

 彼女から放たれた魔法は…命すら燃やして守る…それはまるで回転する炎の剣、ドラケン…竜王が放ったかのような大規模魔法だった。

 母が命を燃やす姿を目に焼付けたエルグは何かを感じたのか、しかし気が付けば幼さ故に繰り返し繰り返し、母の名を叫び続けていた。
 やがて王子を最後まで引き連れた兵が「どうか、ご武運を」と最後の言葉を残して海面から姿を消した頃にはエルグの叫び声もエーゲ海の波と炎に包まれて、やがて霧散していった…。

英雄に託された希望

 事の知らせを受けた男は一縷の望みに賭けて、スパルタの浜辺で彼を探し回っていた。
 人ならざる体躯の、その高い視点から浜辺に打ち上げられ…全く動く様子のない彼を漸く見付けた時には「遅かったか…」と落胆するも、近付いていくとまだ微かに息がある事に気が付く。
 「いや! まだ救いはあるぞ」
 半神の英雄の険しい面持ちから、少しだけ笑みが浮かんでいた。
 彼はエルグの小さな身体をそっと抱きかかえで歩き始めると、独り言のように言った。
 「暫くはこちらに留まるからお前も…何っ、そうか…ふむ…去る前に何かを、か…」

 サムスは幼き王子の境遇に若き頃の自分が少し重なる事を感じていた。彼自身、王の道を断たれた経験があった。
 『自分の場合は、狂気に勝てなかったからだが…』
 しかし…自分が英雄と呼ばれる道があったのと同様に、彼にも地上守護神としての道が残されている。
 ならば、竜王の後を継げるに相応しい立派な戦士に育てあげよう。
 それに何より、数々の師から教わった戦いの技術を誰にも伝承せずに地上を去るのは師匠達にも顔が立たない。
 今迄一度も教える側になった経験は無いが…なんとかなろう。
 スパルタの街並みが見えてくる。
 「ふむ、スパルタにも、だな」

旅立ち

 そして14年の月日が流れた紀元前492年。
 サムスの目の前には逞しく成長した3人の弟子が立っていた。

 彼と同じく体躯が良くて徒手格闘に秀でたレオン。
 弓術と槍術に優れ、更には魔法の才も持つサンドラ。
 そして亡国の王子、竜王の血を引くエルグはやはり父に似て剣術に長けていた。
 「時は来た。お前達に教えることはこれが最後になるだろう」
 騒つく弟子達にサムスは思いを馳せる。
 14年も教えを続けていれば親心も沸くもので、自慢の弟子達には幸せになって貰いたい。

 ただ、エルグには仇敵を討つ事、サンドラとレオンもスパルタの民としてペルシャの侵攻を何とかしたい思いに駆られているのは一目瞭然で、先ずはそれが旅の目標になるだろうし、その困難に立ち向かえるだけの研鑚は積ませたつもりだ。
 心配なのはその後の事だ。問題を解決したり困難を乗り越えたとしても、そこで人生が終わるわけではないからだ。
 この最後の課題が終わったら…伝えるべき言葉があった。